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※音が鳴ります

灰色の空の下、曖昧な世界で君は

 

――イギリスにある小さな家で、双子が生まれた。

 

兄の名を、アッシュと名付け、弟をファジーと名付けた。

彼らは大変仲が良く、すくすくと育っていった。

 

兄のアッシュは気弱だが、穏やかで優しい子に。

弟のファジーは同級生の誰よりも賢い子に。

だが、そんな幸せな毎日も、長くは続かなかった。

 

アッシュは6歳の頃、医師に遺伝子性の筋疾患を患っているとの診断を受けた。
その病は筋力の低下や様々な合併症を伴う難病であり、根本的な治療法はなく成人を迎えるまでに死亡すると言われている。
自身が長生き出来ないと知り、人生に絶望していた幼いアッシュに手を差し伸べたのは、双子の弟であるファジーであった。

――“おれが兄さんを守る。病気も治してやる”

 

 

 

ファジーは医師免許を取得するために、アメリカへ海外留学を行った。

アッシュの病の原因を突き止め、少しでもアッシュが幸せに暮らせるように。

元々天才的な頭脳を持っていたファジーは、16歳の若さで医師免許を取得していた。

その一方で、アッシュの身体は時間とともに病に蝕まれていく。

彼の筋力は衰えていき、12歳になる頃には車いす無しでは移動ができない身体になっていた。

ファジーはイギリスへの帰国後、アッシュと二人暮らしを行うようになった。

ファジーは勤務医として働きながら、アッシュの生活をサポートしていた。

アッシュは人生に息苦しさを感じながらも、懸命に生きていた。

そんな毎日の中で、ファジーは気づく。

兄のアッシュのことを、家族の枠を超えて愛していたということに。
そして、アッシュに残された時間は残り僅かだということに。

もし現時点で病の治療法が発見されたとしても、失われたアッシュの身体機能はすぐには戻らない。

延命できたところで、せいぜい数年といったところだろう。

残された僅かな時間を、ファジーとアッシュはどのように過ごしていくのか。

これは不治の病と闘い、助け合う双子の物語。

​――“僕は、君と一緒にいられるだけで幸せなんだ、ファジー”

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